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きみのコトだけ護らせて。<3>
<『ガ○ダムOO』小説12>
きみのコトだけ護らせて。

※『OO』7話後アレティエ(♀)捏造小説。
 必ず第1回の注意を参照の上、全てOKの方のみお読み下さい。



<3>
「突然でゴメンね」
「……別に構わない」
「えっと…… 単刀直入に聞いちゃうけど。なんでティエリアは僕を避けるの。っていうか、避けるようになったの」
「………」



 案の定、ティエリアは瞳を見開いた後、すっと視線を反らした。
 表情は明るくない。

「マリーを連れてきてからだったよね、そうなったの」
「……」
「僕が助けられて、CBに戻ってきた時。ティエリアは本当に喜んでくれた。刹那に冗談を言えちゃうくらい、きみが本当に…… すごく、なんて言うか、変わっててビックリしたけど」
「悪かったな」
「、けなしてるわけじゃないよ! 僕が…… 4年間つらかっただろうって。僕なんかのために、きみが心を痛めてくれたことが。本当に嬉しかったんだ」
「………」
「それなのに……いきなり話してくれなくなるなんて……。そんなの、つらいよ……」

 僕がそうつぶやいて黙り込むと、ティエリアもまた、俯いて視線を反らした。
 それから言った。

「何を言っている。―――大好きだった女性とやっと一緒になれたんだろう。それが君の一番の願いだったんだろう」
「マリーを助けることが? ―――それは違うよ、ティエリア! 確かに彼女を助けることは僕の絶対の願いだった。でも、それが一番ではないよ」
「―――では、君の一番の願いとはなんだ」
「きみと同じ」
「……なんだと?」

 ティエリアが深紅の瞳を見開いて瞬いた。
 その目をまっすぐに正面から見据える。

「僕たちの願いはいつだって一緒だ。戦争根絶―――この世界から、戦争をなくすこと。際限ない争いから生まれる、つらすぎる悲しみを全てなくすこと。……違う?」
「……無論、そうだ」
「だから! ―――マリーはもう、戦うことができない。彼女とソーマ・ピーリスは違う人間だ。……例え同じ身体だとしても、マリーは戦えないんだ。だから艦を降りてもらった。地上にいたって、彼女が安らげるわけではないけど……これまでに、ソーマ・ピーリスとしての自分が失わせた命の重さに、悩み続けるだろうけど」

 そこでいったん言葉を切った。
 ティエリアは、それは分かるというように少しだけ頷いた。

「それは、戦いを終えた後の我々とて同じだ」
「そうでしょう。でも、僕たちの戦いはまだ終わっていない。僕も、刹那も、ロックオンも、そしてきみだって」
「………」
「これからの戦いは更に困難を増すだろう。僕たちだけがガンダムを、GNドライブを所持していた4年前とは違うんだ。だからこそ、僕たちが力を合わせていかなきゃいけないのにッッ……」

 ティエリアの瞳をまっすぐ射抜く。
 彼はたじろいだように身をすくめた。
 でも逃げられない。

 逃がさない。

「なのに! きみが僕を避ける理由が分からない。話してくれない理由が分からない! 何の理由もなく避けられて、そんな関係じゃこれから…… とてもこれからの戦いを切り抜けられない。だからちゃんと話してよ! ―――ティエリア!!!」
「―――!!!」

 最後の言葉は叫ぶようになってしまった。
 一瞬置いて、そのことをとても後悔した。

 怯えたように身を縮めた彼の瞳が、床に一滴の涙を落としたから。

 ぎょっとして息を呑んだときには、もう遅い。

「……ティ、ティエリア?」
「き……みが、悪いんじゃないか」
「……え、え……えっと、あの」
「突然交信を途絶して……やっと再会できた君を、また失ってしまったのかと思った。そうしたらいきなり女連れで帰ってきて。―――あれで、恋人同士ではないとでも言うつもりか?」

 ………。
 その単語は一瞬、脳内の処理が激しく遅れた。
 こ・い・び・と?
 ―――――~~~『恋人』!?

「恋人、って……、、、ち、違うよ! マリーとはむかし超人機関で出会って、彼女が僕に名前を付けてくれて……あぁ、それは今はいい! そうじゃなくて…… 違うよ。マリーは僕にとって……初めてできた仲間というか友達っていうか―――家族というか。とにかく大事な存在ではあるんだけどッッ」

 あたふたと必死に弁解する。
 いや、弁解じゃなくて説明だ。
 とにかく、僕とマリーはそういう間柄ではない。
 言っている間にも、ティエリアの白い手がこする深紅の瞳から。
 澄んだ雫がぽたり、ぽたりと流れ落ちる。

「とにかく、そういう関係じゃないんだ! だから泣かないでよ、ティエリア……」

 そこまで来て、我ながら間抜けだと思いつつ初めて気づいた。
 何でティエリアが泣いているのか。

「―――――。……わ、たしの方が……。ずっと前から、……だったのに」
「………ティエ、リア……」
「私の方が…… 先に君のことを……ずっと……ってた、のに」


―――――!!!??
『わ・た・し』?



 すぐに、ひどい違和感を覚えた。
 ティエリアの一人称はいつも「僕」だったはずだ。
 それなのに。
 なんで、今ここで『わたし』と言うのだろう。


なぜきみは僕の目の前で。
細い肩を揺らして泣いているのだろう。




 ――――――――――……………。


「―――――ティエリア。ゴメンね」
「……っっ!!!」

 素早く彼に向かって腕を伸ばす。
 目を見開いたティエリアが、驚いてとっさに身を引こうとした。

 でもやっぱり逃がさない。
 瞬時に「彼」を抱きすくめて、抵抗を封じた。
 殴られるコトも覚悟の上で、「そこ」に触れた。

 ……ティエリアは制服だった。
 パイロットスーツじゃない。

 服の上からだって、触れば隠し通せるものじゃなかった。

「……ッッッ、放せ!!!」

 ティエリアが僕の腕を振り払って、身体を放した。
 でももう僕には分かってしまっていた。

「ティエリア………」
「いきなり何をする、貴様ッッ……。万死に値する!!!」
「ゴメンね」
「なんで……なんでお前はッッッ!」
「ゴメンね。気づかなかった」
「なんでッッ………」

 ティエリアはそれだけ叫ぶと、かくりと膝を折る。
 両手で胸を隠すように、自らの身体を抱き締めたままで。
 そのまま座り込んでしまった「彼」を、僕は呆然と見下ろした。


「ティエリア、きみ……。
―――女の子だったんだね」


続く

by umikobusena | 2008-11-30 17:37 | OO小説(11作目~)


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