<『エウ○カセブン』ドミアネ小説2>
Be Together,Forever ※注意!(必ずお読み下さい)※ ・『交響詩篇エウ○カセブン』のドミアネ小説第2作です。 ・本編終了直後、約3年前に書いたもの。 ・ドミアネ大好き! な方だけお読み下さい。 ・本編終了後、軍に所属する2人の話。 ・全7回です。 <1> ―――――交代の時間になった。 私は簡単な引継ぎを済ませると、ブリッジに残る士官に軽く挨拶をしてから居住区に向かう。 ただし、女性用の自分の部屋ではなく、誰よりも大切な……「彼」の部屋へ。 さすがに早朝だけあって当直以外の人間はみな寝静まっているが、できるだけ誰にも会わないように気を配って歩いた。 「彼」と私の関係はもう誰もが知るところだが、だからといって軍艦の中でそれをあからさまにひけらかすわけにはいかない。 嫉妬心なのか単に実直なのか、露骨に嫌悪感をあらわす人間もいないわけじゃないし。 若きエリートとして将来を嘱望されている、彼の仕事の邪魔にもなりたくない。 もうすっかり押しなれたパスワードで、部屋の扉を開く。 中は薄暗かったが、すぐに眼が慣れた。だんだん軍人らしくなってきている。 「……………ドミニク?」 小さく呼んで、壁際のベッドのそばにかがみ込む。 彼は静かな寝息を立てて眠っていた。が、すぐに人の気配に気づいたらしい。 「………アネモネか?」 「うん。交代の時間……」 「すぐに行く」 軍人らしくすぐに目覚め、椅子にかけてあったジャケットをはおり、慣れた手つきで身支度を整えた。仮眠時間は3時間もなかったと思うのに。 私はそんな彼の姿を見ながら、彼がこれまで過ごしてきた厳しい日々を思う。 こんな生活をしながら、必死に私の面倒を見てくれていたのだ。 「………アネモネ? どうした? もう部屋に戻って休んだ方がいい。起こしに来てくれてありがとう」 「………休憩時間、合わないね」 ぽつりと言うと、彼はちょっと目を見開いたあと、なだめるように言う。 「うん。各地の反乱軍でも、過激さが増してきている連中もいるようだし。沈静化した土地も少しずつ広がってきてはいるが、まだまだ不満を持っている地方は多いからね」 これまでの塔州連邦軍の圧制の反動だろう、あの戦い以後、一新された連邦軍に反旗を翻した地方塔州は少なくなかった。 それでも、いまや連邦総司令となったユルゲンス・元イズモ艦艦長の穏健的手法もあって、反乱は徐々に収束に向かっていった。しかし、混乱の続く地域もまだ多く、世界が安定したというにはほど遠い。 連邦中央司令部所属である私たちのスーパーイズモ艦も、その反乱を鎮めるための任務がかれこれ半年以上も続いていた。 オフの休みは、一月に一度あればいい方。 私でなくとも、グチりたくもなると思う。 うつむいたままの私に何か言おうと、彼が口を開きかけたときだった。 廊下の向こうで「ドミニク中佐はまだか!!」という大声が聞こえる。 副艦長の声のようだ。あの人は私とドミニクの仲をよく思っていない人間の筆頭。 珍しくチッと軽く舌打ちをしたあと、彼はもどかしそうに私を見て、 「早く戻るんだよ、いいね」 それだけ言うと私の肩を軽くたたき、足早に部屋を出て行った。 彼は忙しいのだ。 先の大戦の功績を買われ、彼は大尉から中佐に特進された。 この艦において、先ほどの副艦長に次ぐ№3の地位にありながら、大戦の英雄の一人として扱われ、また中央司令部と深い関係をも持っている。 本人はそんなこと全く意に介していないし、喜んでもいないのだが、まわりはそうは思わない。 結局その地位と実力を名目に、中央との折衝をはじめとする無理難題をおしつけられたり、逆に取り入ろうとする連中をあしらうために、余計な神経を使うはめになっていた。 決して彼のせいではないのだが、結局時間のほとんどをあらゆる仕事につぎ込むことになり、私と彼が話せる時間は皆無に近くなっていた。 ………くやしい。 さびしい。 昔は、彼の時間は私のものだったのに。 もちろん任務や他の仕事で一緒にいない時間は多かったが、それでも彼は他の何を犠牲にしても私を一番に優先してくれた。 それなのに今は、交代の時間に彼を起こしに来て、今みたいなわずかな言葉を一言二言交わすだけが精一杯になっていた。 彼のベッドに寝転がり、かけていた毛布を抱きしめてみる。 ―――――ドミニクの匂い。 たまらなく愛おしくて大好きなその匂いは、一瞬だけ私を和ませてくれたけど。 すぐに落胆に取って変わる。 ………冷たい。 わずかに残っていた彼のぬくもりは、すぐにあとかたもなく消えて、冷たくなってしまったから。 頬から一つ二つ水滴を落として、私は彼のベッドを離れた。 部屋を出て、次の廊下の角を曲がった途端だった。 まるで待ち構えていたかのように、そこにいたのは。 「………副艦長」 「何をしているのかね、アネモネ少尉」 私は15歳ながらもKLFのライダーを務めているため、少尉の階級を与えられている。それもまた、この人の気にさわる原因になっているらしい。 「………何でもありません。部屋に戻る途中でした」 「ドミニク中佐の部屋から出てきてかね。何をやっていたのかな、若い男女が二人で。うらやましいことだ」 ―――――!!! ムカつく。 やっぱり見てたんだ。 わかりきっていたこととはいえ、かなり不快。 以前の私だったら蹴りかかってたかも。いや、絶対蹴ってた。 なぜなら、何をしても許されたから。 デューイ大佐の秘蔵っ子として大切に扱われていた私に、逆らえる奴はいなかった。 でも、今は違う。 彼はもういないし、いてほしいとも思わない。 今の私に大切なのは、一人だけだもの。 「―――――交代の時間を知らせに行っただけです。問題であれば次回からは控えます」 「よろしい。この艦が軍艦であることをよくよく肝に銘じておくように」 いやみったらしい口調で告げると、彼はその場を去った。 その背中をにらみつけつつ心の中だけで毒づいて、私も部屋に戻った。 「まもなく交代の時間」と告げる艦内通信を受けた私は、かなり早く部屋を出て、艦内の最後部デッキに向かった。 こちらには機関室や倉庫が入り組んでいるので、前部のブリッジ部分・中部の居住区と比べると格段に人が少ない。 そのため、時間に余裕ができて二人だけで会いたいときは、居住区をさけてここで会うよう彼と約束しているのだ。 照明の控えられたデッキ隅に、彼のはねた黒髪を見つけ、喜んで飛びつく。 「ドミニク! ひどいの、ちょっと聞いて……」 「っ……アネモネ。すまない、すぐに行かなければならないんだよ」 「え? ―――だってこれから休憩……」 「ユルゲンスかんちょ……じゃなかった、総司令から先ほど緊急通信が入ってね。ウェストヤード州の中心部で大きな暴動が起きたらしく、今一番近い位置にいる我が艦に至急向かってくれとの命令が入った。これからその行動計画を練って会議にかけなければならない。ああ、すぐに総司令からの通信も入ることになっているんだ。ごめんね」 「私さっき……副艦長にひどいコト言われたのに―――」 「え、副艦長に? ……アイツの言うことをまともに聞いちゃダメだよ、わかってるだろう」 近くで人の声がした。ドミニクを探しに来たんだろう。 「う、しまった……ごめんねアネモネ、とにかく後でゆっくり聞くから。君ももう交代の時間だし、そろそろ行った方がいい。それじゃ」 「ちょ……ドミニク!!」 彼は一度だけ私を軽く抱きしめ、大急ぎでデッキを出て行った。 一番近くの出口ではなく反対方向の、こちらが死角に入るドアから。 探しに来た人間を引きつけ、私がここにいることを悟らせないようにしたのだろう。 そんな気遣いですら、今の私には腹立たしいばかりだった。 「………!!!」 ガンッと、思いっきり壁を蹴りつけた。 ―――――激痛が走ったのは、足だけじゃなかったと思う。 むしろ、心が。 ―――――その痛みが、私の中の何かをかき切った。 デッキから飛び出した私は迷わず、ブリッジとは反対方向の格納庫へとまっすぐ向かった。 続く
by umikobusena
| 2007-06-07 20:42
| 『エウレカ』小説
|
by 蒼衣海子 訪問者数 メモ帳
カテゴリ
全体 初めにお読み下さい 作品目次 拍手お返事&私信 WEB拍手(管理用) 戦国BA/SA/RA T&B コスプレ 難病/SLE アクセサリー作り 日記 マンガ・アニメ・ゲーム ヘタ/リア OOイラスト OOその他(1期) OOその他(2期) OO小説(11作目~) OO小説(6作目~10作目) OO小説(1~5作目) イラスト 『ひぐらし』小説 『エウレカ』小説 リンク集 素敵頂き物 未分類 ブログパーツ
以前の記事
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||