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なにげない日常を、ともに笑える時間を。<後編>
<『ガ○ダムOO』小説14>
なにげない日常を、ともに笑える時間を。

※『OO』ティエリア(♀)&ミレイナのほのぼの。友情です(笑)
 必ず前編の注意を参照の上、全てOKの方のみお読み下さい。



<後編>
 それを聞いて目を丸くした私以上に、そばにいた父親の方が驚いた。
 トレミーのMSメンテナンス技術者にしてミレイナの父、イアン・ヴァスティは。
 娘がこのイベントの「共犯者」に誘う相手に、よりにもよって私を選んだことに心底驚いているようだった。
 「どうしてスメラギ氏でもフェルトでもなく、ティエリアに?」と尋ねた彼に、彼女は何のためらいもなく言った。

「女の子はみんなバレンタインに、一番仲良しのお友達とチョコレートを作るものなのですぅ!!!」
「い、一番仲良しなのか?」
「そうですぅ! パパ、アーデさんとミレイナは親友なのですよぅ!」 


―――――親友。
親友、か。





 これまで、刹那やアレルヤたちに、「仲間」と呼ばれることはあった。
 それはとても心強く、嬉しいものではあったのだけれど。

 確かに、ミレイナと話す機会は多かった。
 というよりも、明るい彼女は誰にでもよく声をかけてくる。
 それほど多弁でない刹那にも、アレルヤにも。
 そして私にも。

 その明るさが。重くて厳しい、この現実に生きる私たちに。
 どれだけの救いを与えてくれているのか。

 ―――でも、まさか彼女が私のコトを。
 そんな風に思っていてくれたとは知らなかった。
 ミレイナから発されたその「親友」という響きが、とても新鮮で温かかったことを覚えている。

 だから私と彼女は親友だった。
 その瞬間から、ミレイナは私にとってもかけがえのない「親友」になったのだ。


「アーデさん? また手がとまってますよ? チョコ固まっちゃいますぅ」
「―――あ。すまない」
「またハプティズムさんのコト考えてませんでした?」
「まさか。……ところでミレイナこそ、それは誰にやるつもりなんだ?」
「まずはパパです! もちろんママにもあげちゃうのです。あとはセイエイさんとストラトスさんとハプティズムさんとクロスロードさんとラッセさんと……」
「……両親は別格としても、要するに全員か」
「はいですぅ! 皆さんきっと喜んでくれるのですぅv」

 そう言って笑う、その姿は無邪気で可愛らしい気もするが。
 ……なんだか、その笑顔に一抹の怖さも感じるのは何故だろう(汗)
 これがバレンタインの魔力というやつなのだろうか。

 意味不明な思考回路をたどりながら、チョコレートの湯せんに集中していると。
 突然ミレイナが、くすりと笑ってつぶやいた。

「―――あと、アーデさん。」
「……は?」

 母親は特別としても。何故、女の私?
 バレンタインは、女性が男性にチョコレートを贈る日ではなかっただろうか。

 私の表情で、その疑問を読み取ったのか。
 ミレイナは嬉しそうな笑顔を見せてから、こう言った。

「知らないんですか、アーデさん? 大切なお友達は女の子どうしでも、チョコを交換するんですよ」
「―――そう。なのか?」
「はいです! だからもちろん、アーデさんにもプレゼントしちゃうのです!!!」

 ……大切な、友達。
 かつて、私にそうだといえる存在があったことがあるだろうか?

 アレルヤはまぁ…… 一応。恋人、なのかもしれない。
 刹那とロックオンは、大切な仲間で。
 他のクルーたちだって、かけがけのない同志たちだった。


―――そうか。
それならば、彼女はきっと。
私にとって、初めてできた「友達」なのかもしれなかった。


「……そうか。それなら私も、ミレイナにチョコレートを贈ろう」
「ほんとなのですか???」
「ああ、もちろんだ。君には一番上手くできたやつをやろう。アレルヤにはその次のでいいから」
「だめですよぉそんなの! 愛するヒトには一番よくできたのをあげなくちゃ」
「アイツは何でも食べるから平気だ」

 2人で顔を見合わせ、同時に吹きだした。

 ああ、なんて平和で温かい時間。
 初めて知った幸福。
 友達と過ごせる優しいこんな時間が、少しでも長く続いていてくれたなら。

 ―――――仲間なんて、ただの幻想だと思っていた。
 共にいるのは、CBの理想を実現するという、唯一絶対の目的を遂げるため。
 ただそれだけ。
 だから馴れ合いは必要ないと思った。むしろ感情は邪魔だとさえ思っていた。

 ずっとずっと―――――、そう思っていた。

 そんな私を変えたのは、他でもない、その仲間たちだった。

 彼らがいるから、私もここにいる。
 ココにいられる。

 仲間がいるから、大切だから―――
 だから、戦いのない世界を目指したい。実現したい。


始めてできた友達と。
かけがえのない仲間たちと。
ずっとずっと一緒に、こうして笑っていたいから。


2009/04 End.

by umikobusena | 2009-04-19 21:44 | OO小説(11作目~)


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