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とりあえずお試し1話
 アレティエ再会小説最終編(タイトル未定)、第1話書いてみたんですが

 読みたい人は、果たしているのでしょうか……
 正直、疑問;
 それでも続き書いた方がいいのかな?

 あ、でも最近まで見続けて下さった方に申し訳ないので一応上げてみます
 更新停滞のお詫びも兼ねて

 アレティエ最終編、読んでみたい方だけ自己責任でお試し版(第1話)ドゾ
 読んだ後の苦情はご遠慮下さいませ



<1>
「やぁ、ひさしぶり」



 ―――――静かな時を過ごしていた。
 庭の小鳥たちが囀る声を聞きながら、ひとりきりで過ごす穏やかな日々。
 そのある日の昼過ぎのことだった。

 うんざりするほどなじみになった気配が、突然背後に現れる。
 私はやや不機嫌な眼差しを、その唐突な来訪者に向けた。

「……何の用だ」
「相変わらず冷たいなぁ。僕らは同じ存在なんだから、もう少し温かく迎えてくれてもいいんじゃないの」

 顔だって遺伝子だって同じなんだし、と付け加えたその男に。
 誰がお前など、と思わず言い返そうとして。
 口でコイツと言い争っても、時間の無駄だったと気づいた。



 イノベイドたちと、私―――ティエリア・アーデの属したCBとの最終決戦。
 その運命の日から、既に半年近い時が経過していた。
 私は精神体となった意識をヴェーダと一体化することによって、彼らと人類の歩む道を見守ることに決めた。

 決戦後、私はヴェーダ内に存在する仮想空間の一つで過ごしている。
 緑豊かな庭園、白を基調とした建物を模した空間。
 自分の好みに合わせて、初めに作った。

 最後にして最強の敵・リボンズ・アルマークに成り代わり、ヴェーダを掌握したとはいえ。
 私がほぼ完全に理解しているのは、まだ中枢に近い一部のシステムに過ぎない。
 たかが半年程度で全てを理解・コントロールするには、ヴェーダという存在はあまりに巨き過ぎた。

 だから。
 ある時私が作った空間以外に、似たような仮想空間が他にあることを知っても。
 それほど驚かなかった。
 そしてそこに、現実世界で倒されたはずの他のイノベイドたちが暮らしていることを知っても。
 彼らがいま何を感じ、またどう過ごしているのかについては知らない。
 私のコトを恨んでいるかもしれない。
 だが彼らがどう思おうが、それは彼らの自由だ。
 ヴェーダのコントロールを奪う闘いでも仕掛けてこない限り、私も彼らに構う気はない。
 だがコイツだけが、時折こうして私のもとを気まぐれに訪れるのだ。
 リジェネ・レジェッタ。
 ―――私と同じ塩基配列を持つ、同じ顔のイノベイド。



「ねぇ、やっぱり僕らと一緒に暮らさない? みんなだってもう君のコトを恨んだり憎んだりはしていないんだよ」
「なぜそんな話になる」
「正面から闘って、完全に負けたからねぇ。ヒリングあたりはもう一度やったら不覚は取らないとか言ってるけど、実際のところもうどうでもいいんだよね。リボンズはもういなくなっちゃったし。彼を相手にヴェーダを奪還するような相手とやり合っても、勝ち目なさそうだしさ」
「褒め言葉と取っておこう」
「だからさ。もういいじゃない、こんなところで一人でいないで、僕たちのいる空間においでよ」

 なぜ、コイツが私に構うのかは分からない。
 そもそも何を考えているのか、全く理解できない奴だ。

「―――なぜ私に構うんだ。戦いは終わったとはいえ、かつての敵同士だったお前たちとわざわざ一緒に過ごす必要はないと思うが」
「うーん、まぁ……。そう言われちゃうと、そうだけどさ」

 リジェネはそう言って、一度言葉を切った。
 私とそっくりの顔を若葉色の美しい庭園に向けたまま、何かを考えこんだ後。
 もう一度こちらに向き直る。

「一応、君は僕と同じ塩基配列の片割れだからね。親近感というか、親しみを感じているわけ」
「私には全くそんな感覚はないが」
「……君、前に自分は人間だって言ってたよね。人間らしい感情は全部捨てちゃったわけ? 偉大なるヴェーダの掌握者様は」
「あいにくだが、そういった感情はもともと持ち合わせていない」
「そうかな。君だって本当は寂しいんだろ、ひとりきりで」
「くどい。そんな感情はないと言っているだろう」
「嘘だね」

 リジェネは即座にそう断じた。

「君がよく彼らを見てること、僕は知ってるんだよ」
「……何のコトだ」
「君はヴェーダを通じ、世界中のコンピュータやシステムを介して各地の様子を知ることができる。それを使って、よくCBの様子を調べているよね」
「彼らはまだ、これからの世界を変えてゆく存在だ。それを見守り、また監視するのは今の私の当然の役目だと思うが」
「CBのメンバーに対しては、もちろんそうだろうね。でも闘う力と意思を失い、組織から抜けた人間までもずっと監視し続ける必要ってあるのかな?」
「………ッッ」

 思わず言葉を失った。
 コイツ、は―――――

「……貴様。なぜ、それを……」
「あは」

 リジェネはしてやったりとばかりの愉快そうな笑みを浮かべた。

「アレルヤ・ハプティズム。プトレマイオスチームに所属したガンダムマイスターのうち、唯一闘うことを放棄し組織から抜けた人間だ。まぁ、それを逃げたと見るか新しい道を歩んだと見るかはヒトそれぞれだと思うけど」
「……彼自身の選択だ。部外者が口を挟めるコトではない」
「だから、彼の選択をどうこう言うつもりはないんだってば。今話してるのは君のコトでしょ」

 言って、リジェネは私の顔を覗き込む。
 視線を反らしたら負けな気がして、彼の瞳をにらみ返した。
 それしかできなかった。

「会いたいんじゃないの」
「―――誰が」
「素直じゃないなぁ」
「貴様には関係ないだろう」
「ないけどさ。正直、不思議」
「………」
「連絡、取れるでしょう。取ろうと思えば。身体がなくても、今の状態でだって」
「………」

 しつこいヤツだ。
 なんでこうも、意味なく私に構うのだろう。
 でももう、完全に見透かされている。
 これ以上しらを切り通しても、負けを認めない子供のようでみじめなだけだと思った。
 だから言った。

「―――アレルヤには愛する人間がいる。彼女を支えて生きる道を選んだんだ。それで問題はないだろう」
「確かにね。僕たちもCBや元メンバーの動向については、時々チェックしているんだ。この間こんな映像を見つけたよ」

 途端、リジェネの前に小さなディスプレイの画面が現れる。
 ヴェーダ内の仮想空間では、イノベイドは自由にデータを呼び出すことができるのだ。

 そして、小さな四角い画面に映し出されたその光景は。

 ……それはどこかの山岳地帯、だろうか。
 美しい緑に囲まれた、一面の草原。
 そこに咲き誇る、色鮮やかな美しい花々。

 そのなかを他の人々に続いて、寄り添って歩いてゆく2人がいた。

 いっそのこと、懐かしいような。
 とてもとても、みなれたはずの―――
 なのに、まるで何年も見ていなかったかのような。
 そのふたりの後ろ姿。


―――――アレルヤ・ハプティズムと。
マリー・パーファシーの姿だった。



「……もう君のコトは忘れて、新しい道を見つけたようだね」

 何の感情も読み取れない声音で、それだけ告げると。
 私の返事も聞かないまま、唐突にリジェネはその場から消え去った。

「ッッ、―――!!」

 とっさに呼び止めようとして。
 呼び止めてどうする、ということに即座に気がつく。

「……………」

 残された自分のこころには。
 ただ、空虚な寂しさのようなものが残った。

 アレルヤはもう、新しいパートナーと新しい道を歩み始めているのだ……



自分のコトを忘れて。



 それは、とても喜ぶべきことのはずだった。
 そうなることを予期して期待して、自らの道を選んだはずだった。
 それなのに……

 座り込んで、胸を抑える。

 なんなんだ。
 かつて持っていた肉体は既にない。
 こんな痛みはもう知らない。

 まるで鋭いナイフを突き刺されたような、耐え難い胸の痛みを感じ。
 ただただそこにうずくまって、ひたすら息苦しさに耐えた。


、……………。
―――――、切らなきゃ。

アレルヤとのリンクを切らなければ。



 瞬時にそれだけ思いついた。
 ヴェーダは各回線を通じ、トレミーや他のメンバーたち。
 そして―――アレルヤ・ハプティズムの持つ端末とも、どこかで必ず繋がっている。
 手近なシステムを駆使すると、すぐにアレルヤの端末と繋がっているリンクを探し当てた。

 一瞬の迷いの末、そのリンクをヴェーダから切り離す。
 そうしないといけない気がした。

 ありえないのに。そんなこと。
 だって、そうしなければ。


この胸の痛みが、ヴェーダを通じて。
アレルヤのところまで、伝わってしまう気がしたから。


by umikobusena | 2009-06-24 18:30 | OO小説(11作目~)


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